ガウスの超幾何関数には次の式によるオイラー積分表示があります。この積分表示の証明をMaximaを使って追ってみます。
F1:hypergeometric([a,b],[c],z)=gamma(c)/(gamma(c-a)*gamma(a))*'integrate(t^(a-1)*(1-t)^(c-a-1)*(1-t*z)^(-b),t,0,1);
assume(z-1<0)$
assume(-1<z)$
F2:part(F1,2,1,2);
この積分の部分をうまく式変形して行きます。非積分関数は3つの関数の積になっていますが、その3番目の項の式変形を考えます。見通しを良くするために$x=t\,z$とします。
F3:inpart(F2,1,3);
F4:subst(x,t*z,F3);
Maximaを使って冪級数に展開すると以下のような結果を得ます。
beta_expand:false$
F5:niceindices(powerseries(F4,x,0)),niceindicespref:[n];
F6:part(F5,1,1,1);
F7:F6,n:0;
総和の中の式を取り出し$n=0$を代入すると$1-b$になることが分りました。従って約分できて第1項としては$1$になります。つまり第2項の$1$は$n=0$として総和にまとめることができ、以下の式が成り立ちます。
F6:intosum(substpart(0,part(F5,1),1,3))$
F5=F6;
右辺の冪級数の係数を実はポッホハマー記号と階乗で、下記のように簡単に書くことができます。これを証明してみましょう。方針としては下記の右辺、左辺をガンマ関数で表して、左辺 割る 右辺を計算します。
F7:coeff(part(F6,1),x,n)=pochhammer(b,n)/n!;
F8:makegamma([lhs(F7),rhs(F7)]);
F9:F8[1]/F8[2];
この式が$0 \le n$なる整数$n$について$1$であることを数学的帰納法を使って示します。まず$n=0$の場合です。
F9,gamma_expand:true,n:0;
次に%o15が1であることを仮定して、%o15の$n$を$n+1$に置き換えた次式も値が$1$になることを示します。
F11:subst((n+1),n,F9);
この式を%o15(その値は1と仮定)で割ってMaximaの簡約処理を実行します。
F12:F11/F9;
F12,gamma_expand:true,ratsimp;
というわけで%o17を$1$で割ったら$1$になるのですから、%o17も$1$です。数学的帰納法により$0$以上の任意の整数$n$について%o15が1となること、従って%o13が成り立つことがわかりました。%o13を積分に代入することで次式が分かります。
F2=substinpart(sum(pochhammer(b,n)*(z*t)^n/n!,n,0,inf),F2,1,3);
今回はここまでとしましょう。
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