第1種完全楕円積分はモジュラスkについてのガウス超幾何関数として表すことができます。 $$\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\frac{1}{\sqrt{1-k^2\,\sin ^2\vartheta}}\;d\vartheta}=\frac{\pi\,F\left( \left. \begin{array}{c}\frac{1}{2},\;\frac{1}{2}\\1\end{array} \right |,k^2\right)}{2}$$ この証明をMaximaで追ってみましょう。
EI1K:integrate(1/sqrt(1-k^2*sin(theta)^2),theta,0,%pi/2);
Maximaの関数powerseries()を使って被積分函数を$k^2\,\sin ^2\vartheta$について0の周りで級数展開します。Maximaにpowerseries((1-x^2)^(1/2),x^2,0);と打ち込んでみると分かりやすいかもしれません。
substpart(powerseries(part(EI1K,1),k^2*sin(theta)^2,0),EI1K,1)$
F1:niceindices(%),niceindicespref:[n]$
F1:intosum(F1);
総和の内側の式に$n=0$を代入すると1になることから、%o4の総和を$n=0$から始まるように書き直せます。
F2:substpart(sum(part(F1,1,1,1),n,0,inf),F1,1);
総和と積分の順番を入れ替えてみます。これが可能なことは別に議論が必要ですが、ここでは省略します。
F3:sum(2*'integrate(part(F2,2,1,1),theta,0,%pi/2),n,0,inf);
積分変数に関係のない部分が積分の外側に出されることで、%o6が得られました。そしてこの定積分はMaximaも計算してくれます。
F5:F3,nouns;
この総和の内側の式が以下の式%o9に等しいことを示します。
F6:%pi/2*(pochhammer(1/2,n)/n!)^2*k^(2*n);
まず総和の内側の式を取り出します。
F7:part(F5,1);
そしてその式を%o9の式で割ってみます。これが1になることを示せば良いわけです。
F8:F6/F7,ratsimp;
ベータ関数とポッホハマー記号が含まれた複雑な式です。それらをガンマ関数で表示させると以下の式まで漢訳できます。
F9:expand(ev(makegamma(F8),gamma_expand:true,ratsimp));
%o12には半整数に関する2つのガンマ関数が現れています。これらはそれぞれ二重階乗を使った式に直すことができます(例えばWikipediaのガンマ関数の項を参照して下さい)。これらをそれぞれMaximaのルールとして定義します。
defrule(gamma_half_int1,gamma(1/2-n),sqrt(%pi)*(-2)^n/((2*n-1)!!));
defrule(gamma_half_int2,gamma(1/2+n),sqrt(%pi)*((2*n-1)!!)/2^n);
それらを%o12に適用し、簡約すると所望の1が得られました。
apply1(F9,gamma_half_int1,gamma_half_int2),radcan;
%o9の式のnに関する総和の式$\sum_{n=0}^{\infty}\frac{\pi\,\left(\left(\frac{1}{2}\right)\right)_{n}^2\,k^{2\,n}}{2\,n!^2}$はよく見るとガウスの超幾何関数$F\left( \left. \begin{array}{c}\frac{1}{2},\;\frac{1}{2}\\1\end{array} \right |,k^2\right)$に$\frac{\pi}{2}$を掛けた式です。このことから以下の式が証明されました。
EI1K=%pi/2*hypergeometric([1/2,1/2],[1],k^2);