定理5.4.9 $P(q), f(-q), q, z, x, y$が$P(q)=1-24\,\sum_{n=1}^{\infty}\frac{n\,q^n}{1-q^n}, q=e^{-y}, f(-q)=\prod_{n=1}^{\infty}(1-q^n), z= {}_{2}F_{1}(\frac12,\frac12;1;x), y=\pi\,\frac{{}_{2}F_{1}(\frac12,\frac12;1;1-x)}{{}_{2}F_{1}(\frac12,\frac12;1;x)}$の時、
$$ P(q^2)=(1-2\,x)\,z^2 + 6\,x\,(1-x)\,z\,\frac{dz}{dx}$$
が成り立つ。
$P(q)$はアイゼンシュタイン級数、$f(-q)=f(-q,-q^2)$はラマヌジャンのテータ関数です。${}_{2}F_{1}(a,b;c;x)$はガウスの超幾何関数です。
この定理の証明は式変形で行いますが、その際に、対数微分、対数の和は積の対数、合成関数の微分による変数変換を使います。
また2つの定理を使います。
定理5.4.3 (3)
$$f\left(-q^2\right)=\frac{\left(\left(1-x\right)\,x\right)^{\frac{1}{12}}\,\sqrt{z}}{2^{\frac{1}{3}}\,q^{\frac{1}{12}}}$$
定理5.4.8
$$\frac{dx}{dy}=-x\,(1-x)\,z^2$$
次の微分から始めます。
A1:'diff(log(1-exp(-2*n*y)),y);
この微分を対数微分で計算したものと元の微分が等しいことから以下の等式が成り立ちます。
A2:ev(A1,nouns)/2=A1/2;
両辺について$n=1\sim\infty$で総和をとり、$-24$倍して$1$を足すと次の式を得ます。次式$A3$の左辺は$P(q^2)$(ただし$q=e^{-y}$)となっていることに注意しましょう。
A3:1-24*sum(A2,n,1,inf);
ところで対数の和は積の対数であることから、両辺の収束を仮定すると一般的に次の式が成り立ちます。
A5:sum(log(g(n)),n,1,inf)=log(prod(g(n),n,1,inf));
$A5$において$g(x)=1-e^{-2\,n\,y}$としてみます。式の形をA3に合わせるために両辺を$y$で微分し$-12$倍して$1$足しています。
A6:1-12*'diff(lhs(A5),y)=1-12*'diff(rhs(A5),y),g(x):=1-exp(-2*n*y);
$A3$の右辺で総和と微分を入れ替えると上記$A6$の左辺に一致することに注意してください。そして実際にこの入れ替えを収束条件などから正当化することができます。これで$P(q^2)$は$A6$の右辺に等しいことがわかります。
さらに$A6$の右辺をラマヌジャンのテータ関数$f(-q)$を使った形に書き直してみます。それが以下の$A8$です。
A7:'diff(log(f(-exp(-2*y))),y);
A8:ev(1-12*A7,f(q):=product(1-(-q)^n,n,1,inf)) = 1-12*A7;
右辺をさらに変形します。対数微分の形になっていることから右辺は次の式に変形できます。
rhs(A8),nouns;
少し唐突ですが次式$A9$を考えます。この式をMaximaの簡約関数を使って変形します。
A9:-'diff(log(exp(-y)*f(-exp(-2*y))^12),y);
%,nouns,expand;
結果は$A8$の右辺からの式変形と一致します。つまり$A8$の右辺は式$A9$と等しいことがわかりました。
ここからの式変形はラマヌジャンのテータ関数$f(-q^2)$を定理5.4.3(3)を使います。そこで$A10$を定理5.4.3(3)の式とします。
A10:f(-q^2)=sqrt(z)*(x*(1-x))^(1/12)*2^(-1/3)*q^(-1/12);
両辺を12乗します。
A10^12;
$q=e^{-y}$を代入します。
A11:A10^12,q=exp(-y);
$A9$に上記式$A11$を代入します。
A12:A9,A11;
微分の中の式を外の符号も含めて$h(y)$とおきます。つまり$h(y)=-\log(\frac{(1-x)\,x\,z^6}{16})$とすると$A12$は$\frac{d}{dy}h(y)$と書くことができます。やってみましょう。
A13:h(y)=-part(A12,1,1);
A12,-rhs(A13)=-lhs(A13),nouns;
この$\frac{d}{dy}h(y)$を合成関数の微分を使って変形していきます。 合成関数の微分の公式を$A14$とします。
depends(y,x);
depends(x,y);
A14:diff(h(y),y)=diff(x,y)*diff(h(y),x);
上記の合成関数の微分の式の中の$\frac{d}{dy}x$は定理5.4.8によって与えられていました!それを式$TH548$とします。
TH548:diff(x,y)=-x*(1-x)*z^2;
$A13$の両辺を$x$で微分します。
depends(z,x);
A15:diff(A13,x);
合成関数の微分の公式$A14$に定理5.4.8の式及び上記で求めた$\frac{d}{dx}h(y)$を代入します。
A14,TH548,A15;
A16:%,expand;
左辺の微分は$A12$であり、それは遡ると$P(q^2)$でした。またこの式の右辺をちょっと整理すれば定理の式の右辺と一致することはすぐにわかります。これらから定理5.4.9の式が成り立つことがわかりました。