$0\lt x \lt 1$の範囲で関数$F(x)$を
$$F(x)=exp\left(-\pi\,\frac{{}_2 F_1\left(\frac{1}{2},\frac{1}{2};1;1-x\right)}{{}_2 F_1\left(\frac{1}{2},\frac{1}{2};1;x\right)}\right)$$
と定義しました(超幾何関数もFですが、引数の形が異なるので区別できると思います)。
Chapter 5 Corollary 5.2.4
$m$を$0$以上の整数として、$n=2^m$であるとき、次式が成り立つ:
$$F\left(1-\frac{\varphi\left(-q\right)^4}{\varphi\left(q\right)^4}\right)^{n}=F\left(1-\frac{\varphi\left(-q^{n}\right)^4}{\varphi\left(q^{n}\right)^4}\right)$$
今回はこの補題を証明していきます。
証明の方針としてまず今回の補題を少し一般化して、$F(a)=F(b)^n$ならば$F(1-a)^n=F(1-b)$が成り立つことを示します。これと前回証明したCorollary 5.2.3 $F\left(\frac{\varphi\left(-q\right)^4}{\varphi\left(q\right)^4}\right)=F\left(\frac{\varphi\left(-q^{n}\right)^4}{\varphi\left(q^{n}\right)^4}\right)^{n}$ を使えば証明は終了します。
F(x):=exp(-%pi*hypergeometric([1/2,1/2],[1],1-x)/hypergeometric([1/2,1/2],[1],x));
一般化したステートメントの仮定の部分の式からスタートして、結論の式を等式変形で導きます。
'F(a)='F(b)^n;
定義に基づいて展開します。
%,nouns;
両辺の対数をとり、逆数をとり、さらに両辺に$n$をかけます。
n/log(%);
両辺に$\pi^2$をかけてから、指数関数を適用します。
exp(%*%pi^2);
目標とする式の左辺、右辺を表示すると一致していることがわかります。
[F(1-a)^n, F(1-b)];
という訳で仮定から出発して結論の式を導くことが出来ました。
'F(1-a)^n='F(1-b);
$F\left(a\right)=F\left(b\right)^{n}$ならば$F\left(1-a\right)^{n}=F\left(1-b\right)$であることが示ました。
最後のステップです。$a=\frac{\varphi\left(-q\right)^4}{\varphi\left(q\right)^4}, b=\frac{\varphi\left(-q^{n}\right)^4}{\varphi\left(q^{n}\right)^4}$と置きます。すると仮定の部分は$F\left(\frac{\varphi\left(-q\right)^4}{\varphi\left(q\right)^4}\right)=F\left(\frac{\varphi\left(-q^{n}\right)^4}{\varphi\left(q^{n}\right)^4}\right)^{n}$となります。これはCorollary 5.2.3そのものですから成立することがわかります。
また結論の部分は$F\left(1-\frac{\varphi\left(-q\right)^4}{\varphi\left(q\right)^4}\right)^{n}=F\left(1-\frac{\varphi\left(-q^{n}\right)^4}{\varphi\left(q^{n}\right)^4}\right)$となります。これは今回証明したい式ですから、これで証明は終わりました。